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聖地ヘブロンの光と影

August 25, 2012

ヘブロンはパレスチナ自治区の中でも最もイスラエルとの対立が激しい町のひとつ。1994年にイスラエル(ユダヤ人)が入植を開始して以降、ヘブロンに住むパレスチナ人を追い出すために暴力的な行為を繰り返し、ユダヤ人入植者が大量に住み着くようになった。そしてユダヤ人の入植は今現在も進行中だという。(*写真はヘブロンに住む子どもたち)
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ヘブロンまではエルサレムからベツレヘムを経由して、たまたま見つけたバスで向かった。
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ベツレヘムからヘブロンまでは50分ほどで到着。バスを降りてすぐ、パレスチナのアッバス大統領と2004年に亡くなったアラファト議長の大きな垂れ幕が目を引く。
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ヘブロンにはユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒に共通の聖地である、予言者アブラハム夫婦の墓がある。そのお墓の上に建てられた「アブラハム・モスク」には毎日大勢の参拝者が訪れるという。しかし、残念ながらこの日はお休みだった。
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モスク近くの家にいたパレスチナ人の少女。
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物売りが立ち並ぶヘブロンのスーク。
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「パレスチナへようこそ」と書かれた壁。
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カラフルなお惣菜屋さん。
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骨董屋さん。
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古銭屋さんでパレスチナのコインを見せてもらう。穴の空いたコインなんて珍しい。日本だけかと思ってた。
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スークを散策中、空を見上げると金網が張り巡らされていることに気がつく。
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なぜこのような金網があるのか。実はこのスークの上の階に入植してきたユダヤ人たちが、パレスチナ人の住む下の階にゴミや糞尿の入ったビンを投げつけてくるため、金網によってそれを防いでいるというのだ。
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大勢のパレスチナ人で賑わうこちらの大きなスークでも…
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天井には金網のフェンスが敷かれている。以前、上の階に入植してきた心無いユダヤ人がゴミやビンだけじゃ物足りず、巨大なコンクリートの塊を上から投げつけてきたという。
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これがそのコンクリートの塊が投げつけられた跡。フェンスが半壊しているのが分かる。
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スークから一歩道を外れたところにある、とある光景。ここは本来パレスチナ人の住居だった場所。そこに入植してきたユダヤ人が下の階に嫌がらせのようにゴミを投げ捨て、パレスチナ人を追い出し、それがそのままの状態になっている。上に住むユダヤ人の主張としては、元々この地はユダヤ民族のものだから出て行けという理由でゴミを捨てるという。単なる嫌がらせにしても少し度が過ぎるのではないだろうか。
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こんな状況下に置かれているにも関わらず、「Welcome!」と笑顔で声を掛けてくるパレスチナ人のおっちゃん。
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ヘブロンの悲惨な現状とは裏腹に、スークに住むパレスチナ人たちはみんな陽気で希望に満ちあふれているように見えたりもした。
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スークを後にし、ユダヤ人の入植地へ向かう。ヘブロンには昔からそこに住んでいるパレスチナ人と、新たに入植してきたユダヤ人が隣同士で住んでいるが、ここはそのユダヤ人の入植地エリアに行くためのチェックポイント。
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イスラエル側はこのチェックポイントをユダヤ人入植者保護のために設置していると説明しているようだが、実際はパレスチナ人に対する嫌がらせの場でもあるのだ。例えば、外国人やユダヤ人の場合は一瞬で済んでしまう検査が、パレスチナ人の場合だとイスラエル兵にIDを見せ、それが返却されるまで数10分~1時間程度待たなければならないという。これは完全に時間を無駄に浪費させる嫌がらせである。
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荷物検査を終えてチェックポイントを抜けると、そこにはガラーンとした静かな町並みが広がる。半ばゴーストタウン化したこの場所には、元々パレスチナ人が住んでいた住居や商店街があったという。
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扉に描かれたイスラエル国旗のマーク。
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パレスチナサイドとは逆に、こちらでは「FREE ISRAEL」というメッセージが書かれている。
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町のあちこちに停まっているイスラエル軍の軍用車。
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入植地を闊歩する正統派ユダヤ人夫妻。彼らユダヤ人入植者たちは、入植地に駐留する数千人というイスラエル兵に守られている。たとえ彼らがパレスチナ人に対して嫌がらせ行為を行なったところで罪に問われることはないという。
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町中を徘徊するイスラエル兵。イスラエルでは基本的に18歳以上の男女全員に兵役義務があり、その多くの兵士は高校を卒業したての若者である。
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そんな世間知らずの彼らが急に銃を持たされ、入植地に出入りするパレスチナ人たちを管理しているのだ。退屈ついでにパレスチナ人を撃ち殺しても、それ相応の罪に問われることはないという。こんな恐ろしい場所で毎日イスラエル兵や入植者からの暴力や嫌がらせに怯えながら生活しているパレスチナ人は生きた心地がしないだろう。
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ここまで読んでもらうとイスラエル(ユダヤ人)が一方的に悪いと思われて当然かもしれないが、国を持てなかったユダヤ人たちも、アウシュビッツに代表されるような差別や迫害を長きに渡って受けてきた。彼らにとってイスラエルという国は、ようやく手に入れた愛してやまない自分たちの故郷なのだろう。しかし、だからといって彼らが今までに受けてきたような迫害を、今度は罪もないパレスチナ人たちに対して行なっているというのは同意できない。自分がどうこう言える立場ではないが、この目で見たイスラエルは少しやり過ぎのように感じた。
ユダヤ人とパレスチナ人、彼らが手をつなぐ日はまだほど遠い…。ヘブロンの現状を見ているとそう思えてならなかった。

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